都耐協(東京都木造住宅耐震診断登録事務所協議会)の研修旅行で渋温泉の金具屋に行ってきました。昭和11年築の木造4階建ての旅館です。昭和初期の旅館建築の最高峰の一つで、4階建ての斉月楼と別棟の大広間が国の登録有形文化財に登録されています。旅行という非日常を楽しませるために意匠を凝らした空間は、ただただ感動するばかりです。過剰気味のような気もしますが、ここまでやられると次は何が出るかなと楽しみになる程で、すっかり金具屋の手中にハマってしまい、館内見学と温泉で一晩が過ぎてしまいました……脱帽です。
建築の意匠について書きたいことは沢山ありますが、今回は廊下について触れたいと思います。左の写真は1階の応接室脇の廊下ですが、金具屋では客室を戸建ての住宅と見立てて廊下を街路のようにデザインしています。出入口には写真のように室内にも関わらず庇が付き、天井はカマボコ型でダークブルーに塗り夜空を演出する徹底ぶりです(天井左の白っぽい丸は火災報知器)。昭和11年にこのようなテーマパーク的な空間ができ上がっていたとは驚きですね。右は別棟へと続く廊下です。ここは落ち着いた雰囲気ですが、水車のモチーフが壁に埋込まれアクセントとなっています。廊下の照明は照度が低く押さえられ、ブラケット(壁付照明)となっているのも特徴的です。天井の真ん中に照明を置くのではなく、互い違いに廊下に配置されたブラケットは奥へと視点を導き、廊下の長さを感じさせません。先人の知恵は勉強になりますね。
渋温泉・金具屋に宿泊!
- 2015.07.08